「大きな川に阻まれ、年に一度しか逢うことを許されない二人は、ずっと変わらぬ気持ちを持ち続けていられるのでしょうか。」
「………」
心持ち傘を上げ、真っ暗な空を見上げる黒子の横顔に、黄瀬は僅かに眉根を寄せる。
今日は七夕だが、梅雨の直中。しとしとと雨が降り注いでいる。
黒子はきっと、牽牛と織女に重ねている。自分と、天の川よりも広い、広い海に隔たれた地に立つ恋人のことを。
そうしてこう思うのだ。
彼の気持ちが枯れてしまったとしても、自分は、自分の想いは変わらないのだ、と——。
ぱしゃっ。
——火神っちのクソッタレ…!
大切な友人にそんな淋しい思いをさせる男に内心で毒吐いたその時、水溜まりを踏む音に顔を上げて瞠目する。
立ち止まり、宙を見上げる黒子はまだ気づいていない。その場に留まるよう合図して、姿を隠すように黒子の前に移動する。
「大丈夫スよ。織姫と彦星がずっと想い合ってるのと同じように、火神っちも黒子っちのこと、想ってるっス。」
「………そんなこと、あるんでしょうか。」
「あるっスよ? だって、ホラ…」
「っっ?!」
哀しげに俯いて首を振る黒子ににっこりと笑って身体をずらせば、傘の後ろに人影を認めた大きな瞳が、更に大きく丸く見開かれる。
息を飲んだまま動けない黒子の背を、彼の方へと軽く。
一歩、一歩と進む様子に待てなくなったらしい火神が傘を放り出して駆け寄り、黒子を抱き締める。
しとしとと優しく降り注ぐ雨に包まれ抱き合うふたりに目を眇めた黄瀬はくるりと傘を回して。
「やっぱオレも、センパイんとこ押し掛けよっと。」
忙しいと最近逢ってくれない恋人の家に押し掛けることに決め、小さな水溜まりをぱしゃんと踏み越え歩き出した。
折角七夕ですから。
ところで何か来週の掲載位置がヤバイとか言う噂が飛び交ってますが、みんな一体どこからそんな話拾って来るんだと思ってたら、2チャンなんですか。
まあ、今週のアレは、アタシも醒めそうだと思ったけどね…
拍手ありがとうございましたv
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